インフルエンザが蔓延する時期に話題を集めて瞬く間に人気商品となったのが、明治が販売する「R-1乳酸菌」である。よくコンビニやスーパーで目にする機会があるこの商品は、2012年に情報番組が「インフルエンザの対策に期待できる」と報道したところ一躍有名となり、その年のインフルエンザが流行する時期には“欠品”が相次ぐ事態となった程である。
その後「R-1」に続いて「LG21」、「PA-3」と乳酸菌の商品を展開しており、それを「プロビオヨーグルト」と位置付けしており、今では明治のヨーグルト売上高の半数以上をプロビオヨーグルトが占めるまでに成長しました。
これは、40代や50代といった中高年の“健康志向”というニーズを狙った明治の戦略によってここまでの成長を遂げたが、果たして本当にカラダにいいのでしょうか?
■日本一売れているヨーグルト
2015年のヨーグルトメーカーの販売売上高(富士経済2016年 食品マーケティング便覧No.3)によると、明治がヨーグルトの国内シェアの3割以上を占めることが分かりました。
上記結果と「明治の売上高の半数以上をプロビオヨーグルトが占めている」という事を踏まえるとR-1乳酸菌などのプロビオヨーグルトは“日本で1番売れているヨーグルト”という位置付けとしてもあながち間違ってはないといえるのではないでしょうか。
これまでの明治のヨーグルト系の主力商品としては「ブルガリアヨーグルト」でした。この商品はCMで目にする機会も多く、馴染みのあるフレーズなので覚えている方もたくさんいるかと思います。しかし、現在は「R-1」、「LG21」、「PA-3」といった“プロビオヨーグルト”が明治のヨーグルト系で半数以上を占めているので、より多くの人が手にする機会があるヨーグルト商品は”プロビオヨーグルト”になるかと思います。
この3つの商品のセールスポイントとしては「乳酸菌」となりますが、キャッチコピーとしては「強さ引き出す乳酸菌」、「リスクと戦う乳酸菌」、「プリン体と戦う乳酸菌」とそれぞれ違うフレーズを用いています。
これらフレーズを聞いただけだと、プロビオヨーグルトを食べることによって乳酸菌が「リスク」や「プリン体」から守ってくれるだろうとイメージされます。しかし、「本当に効果があるのか?」という部分を掘り下げて考えた時に、これら商品は「トクホ(特定保健用食品)」や「機能性表示食品」でないことから、何らかの特定した効果をうたっていないことに気付かされます。
だからといって何も効果が無いわけではなく、きちんと明治の試験結果で乳酸菌を摂取することによる効果は証明されていることが分かります。トクホや機能性表示食品の取得をしない理由としては「関与成分の含有量の表示」や「抜き打ち検査」に加えて取得に掛る費用の問題が重なるので、一般品としていた方が自由度が高い一面もそこには存在しているからなのかもしれません。
■プロビオヨーグルトの”効果”は!?
プロビオヨーグルトがここまで人気になった理由としては、「情報番組による報道」と「キャッチフレーズ」にあるかと思います。これは、「ヨーグルト」というカテゴリーの中でのコモデティ化を防ぐ企業努力と戦略によって、見事に『体にいい』という印象を世間に植え付けさせることができた結果によるものだと思います。
消費者としては、乳酸菌に健康的な効果があるのか?それともヨーグルトに健康的な効果があるのか?はたまた乳酸菌が入っているヨーグルトだから健康的な効果があるのか?といった部分までの理解はしておらず、「情報番組で報道されていたから」とか「ヨーグルトに書いてあるから」という単純な理由で判断しがちであるので、こうした心理をうまくマーケティングできている結果であるのです。
これはR-1乳酸菌の主な試験結果をまとめた図になります。対象範囲や基準を見る限り、「科学的な信頼度が高い試験」とまではいかないが、一定の効果を得ることができている以上「R-1乳酸菌」というプロビオヨーグルトに“全く効果が無い”ということも断言できないのです。
つまり、「企業やメディアで謳われている効果に一定の期待を持てるが、必ずしも全員がその恩恵を受けるとは限らない」ということです。
では、それを踏まえた上でどう付き合っていくのがいいのでしょうか?
■“補助”という位置付け
これはヨーグルトだけに限ったはなしではなく、サプリメントや市販薬でも同様のことがいえますが、それらの位置付けとしてはあくまでも「補助」という認識を持つことが大事です。実際に医療機関を受診して専門知識の高い医師からの場合を除いて、それらは戦略やマーケティングあるいは一部効果を誇張している可能性があるので、鵜呑みにしたところで効果を得ることができない可能性があるからです。また、一人一人状況や環境も違ってくるので、同じ商品を試したところで「効果が出る人」と「効果が出ない人」が存在してしまうのです。
大事なことは「その成分や商品に依存しすぎない」ということであり、今ある“身体”というのは長い年月をかけて形成されているので、普段の食生活や習慣を改善することに意識を集中させた方がよっぽど効果的なケースもあるのです。
決してヨーグルトやサプリメント、市販薬といったものが悪いということではなく、これらは必ずしも効果的役割を果たすものではないと認識して使用するべきなのです。でないと、「口コミ」や「流行」が変わるたびに追いかけてしまい、時間とお金が無くなるだけであって肝心な“悩み”をいつまでも解決できなくなってしまいます。
そうならない為にも、これらの位置付けをあくまで「補助」として認識する必要があるのです。
しかし、「補助」であるということは「あなたの役に立つ」ということでもあるので誤解しないでください。